新春懇談会 年頭会長挨拶 2021年1月25日
公開日時:2021/01/25
北陸経済連合会 会長 久和 進
新年おめでとうございます。
日ごろから、当会の事業活動に多大なご理解・ご協力を賜り、厚く御礼を申し上げます。本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
新年早々、大雪に見舞われ、道路網・鉄道網がマヒし、市民生活、経済活動に大きな影響が生じました。被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。北陸新幹線は、除雪のため一時的にストップしたものの、ほぼ定時運行され、雪に強いインフラであることが改めて示されました。
(北陸の経済状況について)
昨年はコロナに翻弄された1年になりました。現在も世界各国において感染者が増加し、終息の兆しは見えておりません。我が国においても11月頃から感染者数が再び増加し、昨年末から急拡大し、今月には1都2府8県に緊急事態宣言が発せられました。北陸地域は緊急事態が宣言されるような状況ではないと思いますが、感染防止に一層努め、これ以上感染が拡大しないようにしながら、極力、社会経済活動を継続していかなければならないと思います。
北陸の経済状況ですが、1月14日に発表された日本銀行の「さくらレポート」において、北陸の景気判断は「厳しい状態だが、持ち直しつつある」とされています。厳しい状況が続く中ですが、10月のさくらレポートから判断が引き上げられています。北陸新幹線の敦賀延伸工事など公共工事が高水準で推移しているほか、電子部品・デバイスの生産が持ち直しています。一方、飲食・宿泊・運輸等は引き続き厳しい状況にあり、雇用も弱めの動きになっています。このような状況が何カ月も続くと、企業経営にも多大な影響が及ぶのではないかと危惧しております。
(北陸新幹線)
さて、北陸新幹線についてですが、昨年、金沢・敦賀間の開業の遅延と事業費の増加が唐突に伝えられました。開業が1年遅れることは非常に残念ですが、2024年春には確実に開業するよう監視して行きたいと思います。
今回の動きの中で、事業費増加に対する財源として高崎・長野間の貸付料支払期間の延長は大変大きな意味を持つものと受け止めています。貸付期間30年以降の貸付料は北陸新幹線の敦賀・新大阪間にも活用でき、敦賀・新大阪間の財源確保に少し明かりが見えたかなと思っております。
また、敦賀・新大阪間の着工についても、「2023年度当初に着工すべし」との与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの決議に対し、国土交通大臣から「重く受け止め着工5条件の早期解決を図る」との回答が出され、大きな前進であると受け止めています。
このため、敦賀・新大阪間については、環境アセスメントを予定通り2022年度内に完了し、2023年度当初の着工を実現することが重要であります。更に、2030年頃までの一日も早い大阪までの全線開業を求めてまいります。
今後も、関西の経済団体等と緊密に連携し、全線開業に対する機運を盛り上げ、ともに早期全線開業を強く働きかけるなど、最大限の努力をしてまいる所存です。
(第五次中期アクションプラン)
第五次中期アクションプランですが、2020年度は第四次中期アクションプランの最終年度にあたりますので、新たに2021年度から2025年度を対象とする第五次中期アクションプランを策定しました。
当会は、一昨年公表した、北陸近未来ビジョンの中で、2030年代中頃のありたい姿として、Society5.0の実現によってSDGsを達成するとともに、少子高齢化や人口減少社会を克服して、人々が豊かで幸せに暮らす北陸を、「スマート・リージョン北陸」と定義したうえで、持続可能な北陸を築いていくために、二つの目標を掲げました。一つ目が、左側の北陸の一人当たりGRP(域内総生産)水準を現状の4百万円から大都市圏並みの7百万円に引き上げること、二つ目が右側の多様性と一体性の両立(ダイバーシティ&インクルージョン)によって、性別・年齢・国籍等の違いを受容して、多様な人材が能力を最大限に発揮して、北陸に住む人々が活き活きと幸せに暮らせるようになることです。
これらの二つの目標を実現するため、当会として今後5年間に取り組むべき施策の方向性を、第五次中期アクションプランとして取りまとめました。本アクションプランは「北陸近未来ビジョン」発表後に発生したコロナ禍で顕在化した事象も考慮しながら取りまとめております。
アクションプランは大きく分けて3本柱としました。
1本目の柱は資料上段中央のスマート・リージョン北陸の大前提となる社会基盤整備の促進です。
北陸新幹線の大阪までの早期全線開業や、高速道路、港湾・空港の整備等の人流・物流基盤の強化に、引き続き取り組みます。
今般のコロナ禍では「デジタル化の遅れ」や「首都圏の過密リスク」が顕在化しましたが、今後のウィズコロナ・ポストコロナの中で、当会としても、行政・社会システムのデジタル化や、東京一極集中の打破に向けた取り組みを展開してまいります。今般のコロナ禍では、テレワークやオンライン会議に取り組む企業が増え、必ずしも東京に住む必要がないとして、東京から地方に移住する動きが広がりつつあります。総務省の住民基本台帳人口移動報告によると、昨年5月に現在の基準で集計を開始して以来、初めて東京都で転出超過に転じ、6月は転入超過に戻ったものの、7月以降は転出超過が続いています。今後もこの傾向が継続する可能性があり、東京一極集中打破の 絶好の機会になると考えています。
また、菅総理は所信表明演説で2050年までに脱炭素社会の実現を目指すと宣言されましたが、カーボンニュートラルはエネルギー産業だけでなく全産業で取り組まなければならない非常に大きな課題です。急激に進めようとすればエネルギーの不足や価格の急上昇を招くことも考えられます。そのようにならないよう原子力や技術開発等のエネルギー・環境対策に取り組んでいきたいと考えております。
2本目の柱は企業の労働生産性の向上と成長です。
北陸の労働生産性については、全国平均と比べても総じて低い水準にありますので、向上の余地がかなりあると見ております。
労働生産性や付加価値を向上させるための施策の中で、デジタル技術の活用は特に重要であると考えています。そのためにはデジタル人材の育成が不可欠です。生産性向上や新事業創出を実現するために、AIやIoTといった新しい技術を使いこなせる人材の重要性は更に高まります。デジタル技術だけでなく、日本・世界に通用する人材が北陸にいるような社会を目指したいと考えています。
当会では昨年富山大学と連携し、企業の実務者向けにデータサイエンス講座を開講しました。従業員の能力向上・再教育(リスキリング)は付加価値向上に不可欠であり、このような産学官が連携したデジタル人材の育成や社会人の学び直し・再教育の場の充実に引き続き取り組んでいく必要があります。
3本目の柱は「ダイバーシティ&インクルージョン」ブランド化の推進です。
多様性と一体性の両立に向けては、北陸地域内外の多様な人々から「北陸で働きたい」と思っていただけるような、魅力あふれる企業や職場を地域に数多く作っていくことが大切です。
その最重要ポイントは女性活躍です。当会は昨年、北陸三県出身の女性を対象に就業意識調査を実施しました。このアンケートで、首都圏で働く女性、北陸で働く女性ともに就職先を選ぶ際に「結婚、出産してもずっと働けること」を重視しており、その満足度は北陸で働く女性が高いという結果が出ました。また、首都圏で働く若い女性は首都圏には「希望の職種がある」と答える比率が高いという結果も出ました。
女性がやりたい仕事にチャレンジでき、ずっと働けるような環境を整えることで、「北陸は女性が働きやすい地域」とのブランドを確立したいと考えております。
この第五次中期アクションプランの初年度となる「2021年度事業活動方針」の主な事業活動ですが、まず、社会基盤整備の促進として、北陸新幹線の大阪までの早期全線開業に引き続き取り組んでまいります。社会基盤としての行政・社会システムにかかるデジタル化に向け、要望活動、情報発信に取り組みます。
次に、労働生産性の向上と成長として、デジタル技術の活用事例の発信やデジタル人材の育成などに取り組みます。
続いて、「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進として「女性が働きやすい北陸」とのブランドづくりに向けた具体的取組の提言などに取り組みます。
新たなアクションプランのもと「スマート・リージョン北陸」を目指して事業に取り組んでまいります。
皆様からのより一層のご支援、ご協力をお願い申し上げまして、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。