自社製品だからこそできる復興支援がある
令和6年能登半島地震の発生後、多くの企業が義援金や物資の提供など、さまざまな形で復興支援に取り組んできました。その中で、三協立山株式会社は「企業版ふるさと納税」を活用し、令和8年1月に自社製品であるゴミ収納庫を七尾市へ寄贈。自治体との対話を重ねながら、本当に必要とされる支援を形にしました。
今回は、事業企画を担当する飴谷さんと、販売企画を担当する大塚さんに、取り組みに込めた思いや、復興支援を通して感じたことを伺いました。
Q1今回、企業版ふるさと納税を活用して製品を寄贈しようと考えたきっかけを教えてください。
飴谷さん
震災後、会社として義援金を寄付しましたが、その後、「建材メーカーである当社だからこそできる支援はないだろうか」と考えるようになりました。
私自身、石川県かほく市の出身で、震災前から能登へ行く機会が多くありました。震災後にはボランティアにも参加し、被災された方々や復旧作業の様子を目の当たりにしています。その経験もあり、自社の製品を通じて少しでも復興のお役に立てればという思いが強くなっていったのです。
そんな中、企業版ふるさと納税という制度に製品を寄贈する「物納寄付」という形式があることを知り、この制度を活用すれば製品による直接的な支援が実現できると考えました。現金による寄付も大切ですが、製品を寄贈することで、支援の形が地域に残ります。社員にとっても、自分たちの仕事が地域の役に立っていることを実感できる、よい機会になるのではないかと思っています。
Q2寄贈する製品は、どのように決められたのでしょうか。

飴谷さん
まずは石川県へ相談したところ、「具体的な内容については、各自治体へ直接相談してほしい」との助言をいただきました。そこで、被害の大きかった能登地方の複数の自治体へ連絡し、その中で具体的な話が進んだのが七尾市でした。
大塚さん
七尾市からは、通路シェルターをはじめ、さまざまな要望をいただきました。
ただ、そうした製品は設計や工事が必要で、完成まで時間がかかります。そこで私たちは「自治体の負担が少なく、できるだけ早く届けられるもの」という視点で七尾市の担当者と一緒に検討を進めました。
その結果、既存設備が地震で破損しており、かつ施工が容易なゴミ収納庫を選定しました。
今回寄贈したのは、令和7年12月に発売した新製品です。従来品よりも開閉しやすいスライド式を採用しており、女性や高齢者でも操作しやすい仕様になっています。せっかく寄贈させていただくのであれば、新しい製品を使っていただきたいという思いもありました。
Q3現地での設置も社員の皆さんが携わられたそうですね。
飴谷さん
今回は、製品を開発した社員にも現地へ行ってもらい、一緒に設置作業を行いました。
普段は製品を納めても、社員が実際に設置する機会はほとんどありません。今回は復興支援という取り組みでもあり、自分たちの製品がどのように役立つのかを実際に見てもらいたいと思いました。
大塚さん
設置場所は七尾市の田鶴浜体育館です。当日は雪が心配でしたが、体育館やコミュニティセンターの皆さんが、設置しやすいように周囲を除雪して待っていてくださいました。地域の皆さんのご協力もあり、無事に設置を終えることができました。
直接「ありがとう」と声を掛けていただいたことも印象に残っています。普段は現場で地域の方の声を直接聞く機会は少ないため、貴重な経験でした。
また、田鶴浜体育館は、普段は地域の皆さんが利用する施設ですが、災害時には避難所としての役割も担っています。日常だけでなく、災害時にも利用される場所に設置できたことは、この製品の役割を改めて考える機会にもなりました。

Q4企業版ふるさと納税を活用してみて、感じたことはありますか。
飴谷さん
製品を寄贈する場合は、自治体との調整が必要になるため、現金による寄付より準備に時間がかかります。
一方で、自社製品が被災地で使われる様子を見ることができるのは、「ものづくり企業」ならではの意義だと感じました。社員にとっても自分たちの仕事が地域の役に立っていることを再認識でき、仕事への誇りやモチベーションにつながる取り組みだと、改めて実感しています。
また、地域の皆さんの声を直接聞く機会にもなり、今後の製品開発にも生かしていけると考えています。
大塚さん
企業版ふるさと納税という制度自体を知らない企業も、まだ多いのではないでしょうか。「ふるさと納税」は知っていても、「企業版」は初めて聞いたという方も少なくありません。制度を理解していただければ、「自社製品を寄付して地域貢献できる」という新しい選択肢になると思います。
また、私たちも今回初めて取り組みましたが、一度経験すると理解が深まり、その後はスムーズに進めることができました。

Q5能登半島地震では、富山県西部でも液状化などの被害がありました。御社や地域にはどのような影響がありましたか。
飴谷さん
当社では、射水市の奈呉工場をはじめ、羽咋郡宝達志水町の石川工場で被害が発生しました。人的被害はなかったものの、液状化や配管の損傷、製造設備への影響がありました。改めて自然災害の大きさを実感した次第です。
大塚さん
社員の中にも、氷見市や高岡市など被災した地域に住んでいる方が多く、水道が長期間使えないなど、生活面で大きな影響を受けました。
そのような状況の中でも、ものづくりを止めないことが地域経済を支える企業の役割だと感じました。
Q6北陸経済連合会に期待することがあれば教えてください。
飴谷さん
「企業版ふるさと納税」について制度そのものを知らない企業も多いため、北陸経済連合会には、今回のような取り組みを多くの企業へ発信していただきたいと思います。一社だけではなく、さまざまな企業の事例が紹介されることで、「自社でもできるかもしれない」と考える企業が増えていくのではないでしょうか。
復興支援の方法は企業ごとに異なりますが、それぞれの強みを生かした取り組みが広がっていくきっかけになれば幸いです。
Q7今後、能登とどのように関わっていきたいと考えていますか。
飴谷さん
復興はまだ道半ばです。
現在も復興公営住宅などへの支援について検討しています。また、能登だけでなく、地域課題を抱える自治体への支援にも、企業版ふるさと納税を活用できると捉えています。実際に令和8年6月には同制度を活用し、射水市の保育園へゴミ収納庫を寄贈しました。今後も、さまざまな自治体への地域貢献に取り組んでいきたいと考えています。
地域に根差す企業として、これからも私たちにできることを考え続けていきたいと思います。

震災からの復興には、多くの人や企業が、それぞれの立場で関わり続けることが欠かせません。
三協立山株式会社の取り組みは、「ものづくり企業だからこそできる支援」を形にした事例です。地域の声に耳を傾け、自社の強みを生かして必要とされる支援を届ける。その積み重ねが、能登の復興を支える力となっています。
【プロフィール】
飴谷 浩さん
石川県かほく市出身。三協立山株式会社 三協アルミ社 事業統括部 事業企画部 事業企画課 主事
大塚 真衣さん
富山県高岡市出身。三協立山株式会社 三協アルミ社 営業統括部 パブリックエクステリア営業部 ビルエクステリア営業課 主事
三協立山株式会社
富山県高岡市に本社を置く「環境技術でひらく、持続可能で豊かな暮らし」を実現する企業グループ。ビル用建材・住宅用建材・エクステリア建材の開発・製造・販売、アルミニウムおよびその他金属の圧延加工品の製造・販売を手掛ける。
インタビュー:2026.7.15